「 波間 」
------ これだけは覚えておいてくれるかい、姫君
耳元に届いた、小さな囁き。
------ オレはお前の目的を決して忘れたワケじゃないってこと
その言葉を最後に、ヒノエくんは私たちの前からいなくなった。
熊野水軍は源氏ではなく、平家側につくことを選んだのだ。
熊野水軍を味方に引き入れられなかったことは、源氏側には大きな痛手となった。
平家には私たちが最も脅威を抱える一人、還内府がいる。
そして、熊野別当 ------ ヒノエくんがその隣に肩を並べた。
戦況を見ても源氏より平家が優勢とは思えないのに。
それでも、ヒノエくんは源氏が劣勢だと、判断した。
◇ ◇
「実は、予想できないこともありませんでした。ヒノエがこちらを離れるということを」
「・・・・・・え?」
思わず私は耳を疑ってしまった。
予想、出来ていた?
ヒノエくんが私たちの元から離れることが??
「分かっていたのに・・・止めなかったんですか?」
「そういうことに、なりますね」
「どうしてですかっ!?」
まるで他人ごとのように返ってきた弁慶さんの言葉に、私は思わず叫んでしまった。
知っていたなら、分かっていたのならどうして黙って行かせてしまったの?
彼は・・・ヒノエくんは、私たちには必要な人なのに!
「僕たちに彼を止めることは出来ません」
困ったような表情で弁慶さんは静かに言った。
「望美さん・・・彼はヒノエであるまえに熊野別当なんです。彼には熊野を守る責務があるんです」
「それは、そうですけど・・・!」
そんなこと分かってる。
最初からヒノエくんが諸手を挙げて源氏側につかなかったのも、そのことがあったからだもの。
分かっていたけど・・・気持ちが追いつかない。
◇ ◇
潮の流れの先、波間の向こうに見えるのは赤い旗。
赤は平家の象徴。
数多の船の中に、彼もきっといる・・・。
「ヒノエ・・・くん・・・っ」
涙が止まらないのは、潮風のせいなのか哀しいからなのかなんて分からない。
ただ、心が裂けそうなくらいに痛いことは確かだった。
ヒノエくんがいなくなっちゃうなんて、考えたこともなかった。
側にいることが当たり前のように思ってた。
たとえ熊野水軍が源氏に与しないとしても、ヒノエくんは側にいてくれるんだって。
------ 八葉は神子のために在る。
その言葉に奢っていた罰なの・・・?
私が、いつまでもはっきりとした態度を返さなかったから・・・?
でも、離れてやっと分かったの。
今ならはっきりと言える。
だから私はこの戦いに全力を懸けるよ。
この人海の中、あなたを真っ直ぐに見つけ出して。
------ そして、伝える。
〜 終わり 〜
後書きは下の方へ・・・↓↓
最初に謝罪した理由、分かって頂けたでしょうか??
そうです、ヒノエがまったく出てこないんです(汗
望美独白です。
還内府(将臣)は平家の人間、景時も流れでは対立の立場になる。
だったら、ヒノエが平家につくのもアリじゃない?
という、きっと誰もが一度は考えただろうネタを思いついてしまったので、
今回こういう形で書いてみました。
でも、あまりにも長すぎたので書き方を変えてしまいました(殴
(そうしたら、恐ろしく短くなっちゃった・・・」)
これはいつか・・・ちゃんとお話にしたいです。
ベースはヒノエ×望美ですね。
あ、でも私のことだからヒノエ←望美になりそうな感多大(大汗
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