「 3. 背中合わせ (前) 」  
2006.05.24.Wed / 06:00 
「背中合わせ」と聞いてすぐに思い浮かんだのが、
九郎&望美の二人術「衝天雷光」でした。
なので、九郎×望美のお話にチャレンジ!

予定では短いお話だったのに、
なかなか終わらず気付いたらSSどころじゃなくなってました(大汗
ということで、また分割掲載にします(殴

では、下記よりどうぞ〜♪




「 背中合わせ(前編) 」


「まったくお前はっ、前に出て来なくていいと何度も言ってるだろう!」
 ばんっと床を叩きながら九郎は望美を一喝した。
 しかし、望美もそれに怯まずに怒鳴り返す。
「前に出なくちゃ戦えないじゃないですかっ」
「それを出過ぎなんだと言ってるんだ」
「それって、私が邪魔だってことですか!?」
 思いもしなかった望美の反論に、九郎は目を丸くした。 
「はぁ!? 何を言ってるんだ、お前は! 誰もそんなことは言ってないだろう! お前は神子なんだから神子らしくしていればいいって言ってるんだ」
「じゃあ、神子らしくってどうすればいいんですか!!」
 なおも食いついてくる望美の態度に九郎は少々面食らいながら何とか言葉を繋げる。
「そ、そんなこと俺に聞くな! お前が神子なんだからお前が考えろ」
「分かってないのに偉そうに言わないで下さいっ!」
「だったら朔殿を見習え。朔殿の方がよっぽど神子らしいじゃないか」
 九郎がそう言った瞬間、望美の顔色がさっと朱に染まる。
「------っ!!」
 まるで九郎から視線を逸らすかのように踵を返すと、望美はそのまま無言で廊下の奥へと走り去っていった。


「まったく、何なんだ、あいつは。勝手に怒って逃げ出して・・・」
 望美が消えた方を見遣って九郎はぶつぶつと一人呟いた。
 何で望美があんなに怒るのか分からなければ、突然無言になって逃げていった理由も分からない。
「あーあ、ありゃ相当ヘコんだな」
 その時、新たな声と共に九郎のすぐ側の襖が、すーっと開いた。
「!?」
 驚く九郎の目に入ったのは、苦笑しながら佇む将臣と譲、そしてこの家の主である景時と朔だった。
「お前たち、盗み聞きしていたのか!?」
 将臣の言葉に九郎は憮然とした。
 まさか、誰かに聞かれているとも思わなかったのだ。聞かれて困る話ではなかったが、望美との言い合いの後という状況がばつが悪い。
「聞きたくなくても、こんな襖一枚隔てただけじゃ、嫌でも聞こえるだろ」
 そう答えながら将臣はコンコンと襖を叩く。
「う〜ん、そうだよねぇ。ごめんねー、粗末な襖で・・・」
「兄上! そういう問題じゃありません」
 将臣の言葉を受けて申し訳なさそうに言う景時に、朔がぴしゃりと言い放つ。
 その後、頬に手を当てながら眉をひそめた。
「それより、あんなに走ったりして大丈夫なのかしら・・・」
「そうですよ、まだ痛みも引いてないはずです。走ったりしたら、悪化してしまうかもしれない」
「そ、そうだな・・・」
 朔と譲の言葉に、九郎は望美の怪我のことを思い出した。
 正確には「忘れていた」のではなく、「頭から抜けてしまった」のだが。
「なあ、九郎」
「なんだ」
「アイツ、いきなり黙りこんだろ」
「? ああ、そうだな」
 九郎が頷くのを見て、将臣はふっと彼から視線を逸らした。
 すると、譲と一瞬目が合う。意味ありげな笑みを浮かべる将臣に、その意図を悟った譲は誰にも気付かれないくらいに小さくため息を吐いた。
 もちろん、そんな有川兄弟のやりとりに九郎は気付かない。
「望美は昔からそうなんだよ。自分が相手にかなわないと分かると無言になるんだ。そうして一気に沈み込むんだが、同時にとんでもないことを大概やらかすワケだ」
「とんでもないこと?」 
「そう。バッティングセンターでバット振り回すわ、カラオケ行ってギンギンに叫びまくるわ、すげーもんだぜ」
「ばってぃんぐ? ぎん・・・ぎん??」
 九郎にとって初めて聞く言葉が次々に将臣の口から放たれる。
 だが驚く間もなく、今度は譲が後を続けた。 
「・・・そうですね。俺も何度泣かされたか分かりません。先輩はそうなってしまうと手が付けられないですから、止める方も命がけです」
 思わず九郎は息を飲んだ。
 将臣と譲の言葉の内容を全ては理解できなかったが、どうやら今の望美は手が付けられないくらいに、叫んだり何かを振り回して暴れる状況にあるらしい。しかも、今は八葉である譲でさえ、それを止めるのは命がけだったということだ。
「そ、それは、ちょっと困っちゃうね。急いで捜しにいかないと・・・」
「ちょっとどころじゃないだろう! 怪我人が出たらどうするんだっ」
 景時が言うや否や、それを遮って九郎は怒鳴った。
「俺が行ってくる。元はといえば、俺が原因だ」
 そう言って九郎は望美の後を追うように、彼女が走り去った方へと自らも走っていったのだった。


「・・・・・・結構、単純だな」
 九郎がいなくなると、思いの外簡単に事が運んだことに将臣は呆れたように呟いた。
 将臣は九郎に対して呆れていたが、その将臣に対して呆れたのは譲だ。
「俺、知らないからな、あんなこと言って。火に油を注いだようなものじゃないか」
「火が消えるよりはマシだろ。それに、俺の説明よりも、お前の説明の方が望美が聞いてたらよっぽど怒るんじゃないのか?」
「あれはっ!」
「はいはい、喧嘩はそこまでね〜」
 目の前で険呑な空気を見せ始めた将臣と譲の間に、景時が割って入った。
「まぁ、九郎が望美ちゃんと仲直り出来れば万々歳でしょ」
「そう簡単に出来るのかしら? 望美、あれで結構頑固よ」
 楽観的な兄に対し、心配げに朔が言う。
 この辺りは有川兄弟と性質が似ているかも知れない。
「ところで、“ばってぃんぐせんたー”とか“からおけ”ってどういうものなの?」
 ふと、朔が尋ねる。
 九郎もそうだが、景時や朔も先ほどの将臣のセリフは殆ど意味が分からなかったのだ。
 朔の疑問には譲が答えた。
「俺たちの世界での遊戯場だよ。そんなに危ないものではなくて、みんな誰でも普通にするんだ」
 すると、こちらの世界在住歴約4年の将臣が、譲の説明に補足する。
「ま、こっちの世界で言うところの、“かくれんぼ”や“石蹴り”みたいなモンだな」
「・・・それは全然違うと思うよ、兄さん」


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